こんにちは、自然と歴史からナチュラルを探る担当・栞です。
いつも変化球ばかり投げている筆者ですが、今回も変化球です。
さて、皆さんは神話ってお好きですか?
日本の神話、海外の神話、様々な神話がこの世界にはありますよね。
筆者は小学生時代、図書室にあった世界の神話の本シリーズを読破したことがあります。
さすがにそのほとんどはもう忘れてしまいましたが(笑)
前回の「本当は怖い?花言葉の世界」の記事を書いていた時、そういえば昔読んだ神話たちの中にはたくさんの植物が出てきたことを思い出しました。
それはもう世界中の神話に、もれなく。
つまりそれって大昔から世界中共通で、人々が大自然の中に生きてきた証なのではないでしょうか。
そこで今回は、昔から人のそばに在った証の「神話」を持つ植物たちを紹介してみたいと思います。
目次
邪を祓う力を持つ「桃(モモ)」

日本神話の代表格的神様といえば、やはり日本の両親である伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)でしょう。
この二人についてのお話はあまりにも有名ですよね。
桃は、まさにこの二人にまつわる神話を持つ「破邪の木」と言えます。
妻イザナミが亡くなった後、夫イザナギは寂しさのあまり死者の国まで妻に会いに行ってしまいます。 しかしイザナミは再会を喜びながらも、姿を見るのは待ってほしいと言うのです。 案の定、我慢できず死者の国を覗いてしまったイザナギ……。 鶴の恩返しなら奥さんが逃げて終わるところですが、イザナミは醜い死体となった自分の姿を見られたことに激昂します。(そりゃ怒りますよね) 当然、驚いて逃げ出すイザナギと、怒り狂って追うイザナミという構図ができあがるわけですが。 この時イザナギが追手を足止めするために投げ、見事鬼女を撃退した物が「桃の実」なのです。
「桃太郎」が桃の実から生まれるのも、3月3日が「桃の節句」と呼ばれるのも、この神話にもとづく破邪の力にあやかっているのかもしれません。
古から薬の「蒲(ガマ)」

数ある日本神話の中でも非常によく知られているものの一つに「稲羽の素兎」のお話がありますね。
どんなお話か知らなくても「いなばのしろうさぎ」という言葉だけは聞いたことがある人がほとんどではないでしょうか。
昔、一羽のウサギが淤岐島(おきのしま)から本州へ渡ろうと思いました。 しかし泳いで渡ることができないため、海を泳いでいたサメたちに「君たち一族と僕たち一族のどっちが多いか知りたくないかい? できるだけ多く同族を集めてきて並んでくれたら、僕が数えてあげるよ!」と声をかけました。 素直なサメたちは一列に並び、ウサギはその上を跳んで渡りながらサメを数えていきます。 そしていよいよ最後の一匹を数えた時、ウサギはついうっかり「騙されたね!」とサメを嘲笑ってしまったので、仕返しに毛をまるっと毟られてしまったのでした。 こうして痛みに泣いているウサギに大国主が教えてくれた薬こそ「蒲の穂の花粉」だったのです。
蒲の花粉は生薬の世界では「蒲黄」と呼ばれていて、昔から止血・傷損に効くとされています。
この神話が生まれた頃にはもう、蒲黄は人々の身近にある薬だったのかもしれませんね。
世界を体現する「トネリコ」

北欧の神話には世界を体現する巨木「ユグドラシル」が登場します。
日本語では世界樹と訳されるこの木は、北欧神話の考え方における九つの世界全てに根を張っている巨大なトネリコの木なのだそうです。
むしろ世界全てを支えていると言ってもいいかもしれません。
しかし世界樹はファンタジーの権化のような存在にも関わらず、なぜ「トネリコの木」とはっきり品種が決まっているのでしょうか。
実はトネリコの木(ここではセイヨウトネリコを指します)は、回復力があって成長も早いことから木材として広く親しまれてきました。
その特徴は固く丈夫で耐久力が大いにあることで、古代ギリシャでも「力強い堅固さの象徴」とされていて様々な記述に登場するんです。
人々に古くから寄り添い「力強い堅固さの象徴」であったからこそ、世界を支えた巨木として選ばれたのかもしれませんね。
特別な妖精が住む「ガジュマル」

沖縄を中心に親しまれている「ガジュマル」の木には、「キジムナー」と呼ばれる妖精が住んでいると言われています。
キジムナーの姿形は所により異なります。(赤い子どもというのが多い説のようです)
基本的には人間と友好関係を築き、共生している妖精なのだそうですが、禁忌を破ったり樹を害するとかなり恐ろしい報復があると言われています。
キジムナーに関する伝承はいくつもありますが、その本質は「誠実に接すれば良き隣人となって恩恵をくれ、不誠実に接すれば徹底的に報復を受ける」ことにあるのです。
沖縄の人々にとってガジュマルはごくごく身近にある樹木なので、それらを大切にする精神を育てるために生まれたのがキジムナーという妖精なのではないでしょうか。
人間のために神が創った「オリーブ」

ギリシャ神話には数々の植物が登場します。
その多くが、神様の都合だったり、本人の意思だったりで人(精霊)が姿を変えた植物なのですが……
ギリシャを象徴するような印象もある「オリーブ」は、それらとは少し異なる神話を持っています。
女神アテナは、海神ポセイドンとある領有権をめぐって「どちらが市民に役立つ贈り物をするか」を競いあったことがありました。 そこでポセイドンは塩水の湧き出る泉もしくは戦に役立つ馬を、アテナは食用となる実とオイルの採れる「オリーブの森」を贈りました。 その結果、勝者はアテナとされてその土地の守護女神になり、その首都はアテナイ(現在のアテネ)と呼ばれるようになったのでした。
神話の中でも語られていますが、オリーブは実も食べられてオイルも採れる植物です。
「人の役に立つもの」として作られたという神話が与えられるということは、それだけオリーブがギリシャの人々にとって身近で大切な植物であったことが伺えますね。
あらゆる場で特別視される「林檎(リンゴ)」

最後は多数の神話や伝承に登場し、その度に特別視されている「リンゴ」のお話です。
やはり最初に思い浮かぶのは、旧約聖書の中でアダムとイブが食べてしまったとされる禁断の果実のエピソードでしょうか。
禁断の果実=リンゴであるとされたのは後の時代につくられた俗説だと言われていますが、それをみんなが受け入れてしまうくらいの魅力がリンゴにはあるのかもしれません。
(最初にリンゴ説が現れたきっかけはラテン語のようです)
またリンゴと神話といえば「黄金の林檎」も外せません。
ギリシャ神話と北欧神話を中心に、ヨーロッパ各地の伝承にも散見される幻の果実です。
例えばギリシャ神話における黄金の林檎はこんなお話。
栄誉ある結婚式の客として招待されなかったことを怒った争いの女神が、宴の場に黄金の林檎を投げ入れました。 それには「最も美しい女神に」という言葉が書かれていたため、その場にいた3人の女神の間でこの林檎の争奪戦が始まってしまいます。 女神たちは黄金の林檎を手に入れるため、審判を任された青年にそれぞれ賄賂を約束するのですが…… これが後のトロイア戦争へと繋がる火種となってしまったのでした。
一般的にこれらの神話や伝承を絵画化・映像化するにあたっては、金ピカのリンゴの姿で描かれることが多いですね。
実は「黄金の林檎」という言葉が示しているのもリンゴではないと言われているのですが、やはり金ピカのリンゴが優先して思い浮かんでしまうくらいにはリンゴが身近で魅力的なのでしょう。
人間と植物、そばにいるから物語が生まれる
いかがでしたでしょうか。
今回は様々な種類の神話・伝承からピックアップして植物を紹介してみました。
古くから人間のそばにあるからこそ、誰が語り出したかも分からない物語の中にいろんな植物が登場します。
そこには植物の特性だったり、人間にとってどんな存在かだったり、そういった要素が織り込まれていて、
昔の人々がそれだけその植物についての知識を持っていたことを示していたり、
あるいは若い人たちが物語を通して植物のことを知るといったサイクルが見えてきますよね。
これは必ずしも古い時代だから起きたことというわけではありません。
現代の私たちも、古くから伝わる物語を通して植物を知り、自然を知り、
そして次世代に伝えるために本を書いたり語って聞かせたりしています。
いま皆さんのそばにいてくれる植物たちは、あなたにとってどんな存在ですか?
一緒にいてどんな特性を発見できましたか?
それを言葉にしてみたら、新たなナチュラルライフの楽しみ方に繋がっていくかもしれませんね😁
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