皆様こんにちはGDスタッフです。
あっと言う間に1月も半ばにさしかかりましたね!
先週からこの冬一番の冷え込みとなっております。
そんな外に出るのも億劫になってしまう時期は、その時期ならではの景色を楽しんでみてはいかがでしょうか?
朝冷え込んだ植物には霜が降りとても幻想的です。
うっすら白くなった葉っぱを見ると冬っていいな……と思いますね。
その足元では霜柱ができていて、子供時代を思い出し意味もなくザクザクしてみたり……
さて、今回は植物の学名のとその命名の仕組みなどを皆さんとシェアしたいと思います。
植物には学名と呼ばれるラテン語の名前がついており、全世界共通の名前となっております。
人名や地名など様々な名前がついており、命名された背景などが見えてきます。
目次
そもそも植物の学名とは?
植物の学名は、国際植物命名規約に基づき、「属名(generic name)」、「種小名(specific epithet)」をラテン語形で列記し、最後に「命名者」を付記する”二命名法”によって表記されます。
この命名法は「分類学の父」と称される、カール・フォン・リンネ(1707-1778)によって体系づけられました。
ラテン語表記を共通ルールとするため、全世界で植物の名前を共有することができます。
属名・種小名としてどんな名をつけるかは命名者に任されており特に制限はないそう。
例えば、日本人に馴染みの深い「銀杏」は属名:Ginkgo 種小名:biloba 命名者:Linnaeusとなります。
イチョウの属名のGinkgoは江戸時代のイチョウの呼称であった銀杏(ginkyo)に由来し、命名者のリンネが筆記体のyをgに誤認して付けたそうで、「ギンコ」と発音されていた当時の日本語とは異なってしまったそうです。
種小名のbilobaはラテン語で二つに浅く裂けたという意味で、葉の形(イチョウの別名鴨脚は葉の形が鴨の足に似ていることから)に由来します。
種小名には植物の状態に関するものの他、地名、人名、土着名など様々な名が用いられています。
学名の表記の仕方
学名の表記方法は細かく決めらており、属名は大文字から、種小名は小文字から書かれ、ともに斜字体で表されます。
公式には、命名者の名前を表記します。
その他、さらに細かい説明を学名に入れる場合があります。
その場合、省略した文字を入れて表します。
多くみられるものは、3名法と呼ばれ、種の下位分類である、「ssp. / subsp.(亜種)」・「var.(変)」・「f.(品種)」です。その他、同意語を表す「syn.」や、雑種を表す「x」、ケモタイプを表す「ct.」があります。これらはすべて斜体にせず表示されます。
園芸品種ではまた違った表記をします。
属名+種名(種小名)までは同じですが、その下に続く園芸品種名を表記することがあります。
園芸品種とは、基本の植物を交配させて人工的に作られた植物のことです。
その場合、‘’でくくるか、cv.(cvs.)の後に園芸品種名を書きます。cvはcultivar の略です。
属名+種小名
一般的な学名の表記の仕方です。
例: セダム(属)モシニアナム「Sedum mocinianum」
属名+種小名+’園芸品種名’
一般的な学名の表記の後に、園芸品種名が続く場合です。
園芸品種名ではなく、園芸名をいう場合もあります。
これは海外のものが日本に入ってきたときに名付けられた日本風の名前です。
例: エケベリア(属)ピーコッキー‘デスメチアナ’「Echeveria peacockii ‘Desmetiana’」
属名+’園芸品種名’
種小名を省き、園芸品種名を表記する場合です。
例:エケベリア(属)‘パーティードレス’「Echeveria ‘Party Dress’」
属名(+種小名)+cv. (+’園芸品種名’)
cv. を用いて園芸品種であることを表す場合です。
園芸品種名や種小名は省く場合もあります。
例:セダム(属)黄麗「Sedum cv.」
種小名いろいろ
属名の次に表記される種小名は形容詞や人名、国名、地域名など様々なものが使われています。
その中の一部をご紹介したいと思います。
- aestivalis・・夏の
- albus・・白い、白色の
- amoenus・・優美な、魅力的な、愛らしい
- angustifolius・・幅の狭い葉を持つ、細葉の
- barbatus・・髭のある、長軟毛のある
- basilicus・・王者らしい
- cataria・・ネコ(Nepeta cataria:キャットニップ)など
- chionanthus・・雪の花
- citratus・・ミカン属のような(Cymbopogon citratus:レモングラス)など
- citriodorus・・レモンの香りがする(Backhousia citriodora:レモンマートル)など
- cordatus・・心臓型の、心形の(Houttuynia cordata:ドクダミ)など
- elatus・・背の高い(Cyrtanthus elatus:キルタンサス・エラタス)など
- hortensis・・庭の、園の(Anemone hortensis:アネモネ・ホルテンシス)など
- maculatus・・斑紋のある、斑点のある
- maritimus・・海の、海浜生の(Malcolmia martima:バージニアストック)など
- microphyllus・・小さい葉の
- nudicaulis・・裸茎の、茎に葉がない
- officinalis・・薬用の、薬効のある
- orientalis・・東の、東方の(Helleborus orientalis:クリスマスローズオリエンタリス)(Helonias orientalis:ショウジョウバカマ)など
- pennatus,pinnatus・・羽根状の(Cosmos bipinnatus:コスモス)など
- pidicus・・はにかみ屋の、内気な、縮む(Mimosa pudica:オジギソウ)
- pirpureus・・紫の(Vitex agnus-castus pirpureus:西洋ニンジンボクプルプレア)
- sasanqua・・サザンカ
- semperflorens・・四季咲きの(Begonia Semperflorens-cultorum:ベゴニア・センパフローレンス)
- triphyllus・・三葉ある、三葉の(Trifolium repens:クローバー)
聞いたことのあるものや、全くないものなどたくさんの種小名があります。
種小名が分かると、その植物の性質を知ることができるので、店頭に売っている花苗のタグを見る際にまた違った楽しみがあるかと思います。
ハーブは基本的に和名ではなく学名で表記されているそうですので、ハーブを勉強される方は覚えなくてはならないということですね。
日本の名前が入っている学名
日本を意味する「japonicus」のついた植物は263種あります。
フキや白樺、ハンノキ、ニレ、ツバキ、マサキなどです。
上記リンネの確立した二命名法によると特に決まりはないとのことなので、日本原産じゃなければならない訳ではありませんが、欧州の植物学者やプラントハンターが日本で採取した植物にjaponicusの名前を付けているので、日本の植物と言っていいとのこと。
産地名は時として間違えられることがありますが、他の国固有の植物にjaponicusとついているものはないとのことです。
ジャ●ニカ学習帳のジャポニカですね。
また、japonicusと同じく日本(Nippon)を意味する”nipponica“や”nipponicum“と付けられたものも17種あるそう。これは、幕末になると日本の国名Nipponの名称が欧州にも知れ渡るようになったこと、japonicaの名を冠したものが多くなりすぎた、などの理由からとのこと。その中の半分以上は欧州人植物学者による記載だが、残りは邦人学者が命名しているそう。
ツバキ
学名:Camellia japonica Linn
直訳:日本のツバキ。Linnはリンネの人名。
和名:椿、厚葉木、艶葉木
由来:葉が厚いので厚葉木、また葉に艶があるので艶葉木となったなど様々な由来があります。

スイカズラ
学名:Lonicera japonica Thunb
直訳:Loniceraはドイツ人博物学者アダム・ロニツアーに由来します。Thunbはツンベリーの人名。
和名:忍冬、吸葛
由来:花の蜜を吸ったり、おできの吸出しに利用したことから、「吸う葛」の名がついたとも言われます。「忍冬」はそのまま冬を忍んで春に咲くです。良い香りがします。
英名:ジャパニーズ・ハニーサックル

命名は早い者勝ち!
植物学名の命名はいわゆる「早い者勝ち」のルール(国際植物命名規約)であり、基準標本(type specimen)を作製し、その形態的特徴について記載したものが命名の優先権があります。
しかし、後世に別の場所で採集したとしても、それは新産植物にしかならず学名は変わらないのです。
また、採集した植物種を別種として記載したものが以前に発表されたものと同種であった、ということもしばしば起こると言います。
その際も、国際植物命名規約のより後で付けられた名前は異名(synonym)とし、最も古い名前を用いなければならないとのこと。japonicaやsinensis(中国)などを冠した植物は一般的に古い時代に欧州の植物学者によって記載されているので優先権が高く、種小名が変わることはないそう。
プラントハンター!
プラントハンターとは、未知なる植物を探し出し持ち帰ることを目的に採集する植物の専門家です。
プラントハンターが最も活躍したのは、大航海時代以降のヨーローッパです。
当時は、食料・香料・薬・繊維などの分類学が発展するとともに、「新世界」などで採取された珍しい花の種子や球根を園芸品種として育てる趣味が盛んであった為と言われています。
プラントハンターは国や貴族、園芸会社などからアメリカ大陸やアジア各地に派遣された、植物学や栽培法に詳しい人物であり、赴任地で新な有用植物や園芸品種を求めて植物採集を行い、その場で繁殖や改良まで手がけることもあったと言います。
著名なプラントハンターと言えば、19世紀初頭に来日したドイツ出身医師のF.Bシーボルト、19世紀半ばに来日したイギリス人植物学者ロバート・フォーチュンやジュゼフ・バンクス、ユルバン・ジャン・フォーリーなどである。
初めて植物に学名を与えた日本人
「伊藤篤太郎」
愛知県出身の植物学者で東京大学教授であり植物学者の・伊藤圭介の孫。
明治5年より東京の祖父の許で植物学を学ぶ。
明治17年からイギリス、ケンブリッジに留学し、最新の植物学を修め、帰国後は西洋の方法を元に西洋植物学の改革を唱えた人物。
著書に「大日本植物図彙」などがある。
トガクシソウ(日本固有種)についての珍事件
破門草事件!矢田部を裏切った!?伊藤篤太郎
矢田部とは1884年(明治17年)当時東京大学理学部植物学教室の教授であった矢田部良吉氏のこと。
アメリカ帰りだった矢田部は旧来の本草学者とは考え方が明らかに違い、何としても「日本人の手で命名を」という意気込みに燃えていた人物。
1875年(明治8年)
伊藤篤太郎の叔父である謙が戸隠山で「戸隠草」を採集
1883年(明治16年)
謙の甥である篤太郎が、マキシモヴィッチにその標本と新種の提案名を送る。
(当時の日本にはまだ文献も標本も少なく、新種を発見してもそれを鑑定する術がなかった為、日本の植物学者たちはロシアの植物学者マキシモヴィッチに標本を送り鑑定してもらっていました。そして新種と判断されると学名の最後にMaximと記載し代理で発表してもらっていたのです。)
1886年(明治19年)
それに基づきマキシモヴィッチが”Podophyllum japonicum Ito ex Maxim. “の新種名で論文を発表(podophyllumはメギ科の意味)
しかし、発見から9年後・・・
1884年(明治17年)
矢田部が同じ戸隠で同じ植物を採集し、東京文京区の小石川植物園に植える。
1886年(明治19年)
矢田部が植えた植物が開花。これを見て、矢田部は新種の可能性が高いと判断。
1887年(明治20年)
矢田部がマキシモヴィッチに鑑定を仰ぐ。
1888年(明治21年)
マキシモヴィッチから、新属と考えられるので「発見者に献名して”Yatabea japonica Maxim.”と呼びたいが、正式な発表前に花を調べなくてはならないので、花の標本を送って欲しい」と返答が来る。
これに矢田部は歓喜し「日本の植物界初の栄誉である」と喜び、その嬉しさから同僚である助教授の大久保三郎に見せた。
さらに大久保が、当時教室によく来ていた伊藤篤太郎にこの件を話す。
これを聞いた伊藤篤太郎は、日本人の手による新種の命名がすでに自分によって行われていたことに焦ったという。
しかし矢田部はそれに気づいていなかった可能性が高い。
しかも伊藤は、和名について祖父の圭介と相談して「トガクシソウ」と名付けていた。
ここへ新属として「ヤタベア」なんてつけられたら大変だ!これは見逃せない!
その3ヶ月後
1888年10月(明治21年)
イギリスの植物雑誌のジャーナル・オブ・ボタニイ誌上に、伊藤篤太郎がこの植物についての報告文を載せ、「とがくししょうま」にランザニア・ジャポニカという学名を付して公表する。
これによって、新種名に続いて新属名も篤太郎が日本人として初めて命名したことになります。
矢田部は篤太郎の新属名発表の後、マキシモヴィッチ経由で自分の名前のついた新属名を発表しましたが、先取権(早い者勝ち)のためそれが認められることはありませんでした。
こうして、伊藤篤太郎は日本人として初めて植物に学名をつけた人物として記録に残ることになったのですが、面目丸潰れな矢田部は伊藤の植物学教室への出入りを禁止。
これが「戸隠草」が「破門草」と呼ばれるようになった訳なのです。
ちゃんと確認すればよかったのに……。
植物の学名、それはロマン・・。
今ではなかなか新品種の植物が発見されることはありませんが、地球にはおよそ20〜30万種の植物が存在すると言われています。(植物学者により異なる)
しかし、動物や魚など新発見があったニュースがちらほらテレビでも取り上げられますね。
自然界で発見されなくても、品種改良などにより新しい品種が日々研究、開発されています。
現在では植物の新品種は農林水産省にて保護されており、国際条約もあります。http://www.hinsyu.maff.go.jp/act/upov/upov1.html参照
また、新発見がある一方で1年間に絶滅し地球から姿を消してしまう「種(しゅ)」は4万種と言われています。(生物全体)
学名の意味や由来を調べると、その植物の発見された時代背景や場所などを紐解くことができます。
ガーデニングで花苗を手に取る際、必ずと言っていいほど品種のタグが差してあります。
そこに学名が書かれていることがありますので、植栽をした後その学名について調べてみたら、植えた植物にさらに愛着が湧くかもしれませんね。
学名:Ranzania japonica T.ito
直訳:Ranzaniaは「日本のリンネ」とも称される江戸時代の本草学者である小野蘭山に献名されたもの。
和名:戸隠草
由来:長野県の戸隠山で最初に採集されたことによる。別名「破門草」現在は絶滅危惧種に指定されています。
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