こんにちは。IN NATURAL STYLE編集部です。
観葉植物というと、さまざまな形の葉をイメージする人が多いかもしれませんが、構造上、葉というものを持たない苔も観葉植物として人気を集めています。
理由としてよく耳にするのは、苔の持つ独特な風情や美しさに魅了される、静かに生長していく姿に癒やされる、といったものです。
ここでは、観葉植物としての苔にはどんな特徴があり、育てていく上でどんな点に注意して育てれば良いのかを解説します。
苔にはどんな特徴があるの?
苔とは、岩や地面に直接張りつくように生育する、緑色の植物の総称です。
中学校の理科の授業で、コケ植物として習ったという記憶のある人も多いかもしれません。
コケ植物は、ゼニゴケなどが属する苔類(たいるい)、ミズゴケやスギゴケなどの蘚類(せんるい)、ツノゴケに代表されるツノゴケ類など、実に数万種類が確認されていますが、園芸用として好まれるものに限定すると20種類ほどになります。
苔の大きな特徴は2つ、「根茎葉の区別がない」ことと「胞子で増える」ことです。
苔には根っこと呼ばれる部分がないので、地面から水分を吸収することができません。
よって、体の表面全体から空気中の湿気と光を吸収して光合成を行う仕組みになっています。
よく見ると、根っこのように見えるものがありますが、これは仮根という、体を岩や地面に固定させるためのもので、根っこではありません。
また、苔には種というものができないので、胞子という粉のようなもので自然繁殖していくという点も、他の植物とは異なります。
種類によって日照条件が異なる
苔というと、ジメジメした薄暗いところで見かけることが多いので、そういう場所で育つものだと思っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、実際には苔にもさまざまな種類があり、日照条件もそれぞれ異なります。
観葉植物として苔を育てていくには、好みの苔がどんな場所で生育するものなのかを知っておくことが大切です。
たとえば、ギンゴケやスギゴケは日向や半日向を好む性質があります。
特に、スギゴケは乾燥した場所でも生きていける強さを持っているので、観葉植物としても人気のある苔です。
ハイゴケの場合は半日陰や、やや暗い日陰で育ちます。
ハイゴケは生長のスピードが速く、丈夫なので、インテリアとして人気の苔玉や苔テラリウムにもよく用いられています。
また、シノブゴケは、やや暗い日陰の湿った場所を好む苔です。
緑色が鮮やかなので、園芸用として利用されることがよくあります。
林の中など、湿度の高い完全な日陰を好むのはヒノキゴケです。
ふさふさした形で色もきれいなことから、造園で使用する人が多くいます。
このように、苔にも好ましい生育環境というものがあるので、育てたい場所によって苔を選んでいくとよいでしょう。
苔はどうやって植える?
根茎葉の区別がない苔を植えるには、まき苔法、移植法、貼り苔法を用いるのが一般的です。
それぞれの方法や特徴を把握して、自分に適した育て方を探っていきましょう。
まき苔法は、最もよく行われている植え方で、小さくほぐした苔を種のように土にまく方法です。
まず、好みの苔を手でほぐして細かくし、土を入れた浅めの鉢や育苗箱に、均等にまいていきます。
次に、苔と苔のすき間を埋めるように上から砂をまき、水をたっぷり与えてください。
ポイントは、乾燥を防ぐため、ぬらしたキッチンペーパーなどを鉢や箱にかぶせることです。
芽が生えそろうまで1カ月程度、湿度管理をしていきます。
少し手間や時間はかかりますが、少ない苔からスタートできるのが利点です。
移植法は、苔を小さな塊にして土に植えつける方法です。
大型の苔として知られる、スギゴケやヒノキゴケに適しています。
まず、植えつける土に腐葉土を混ぜて耕し、表面を平らにします。
次に、一握りの苔を好みの量だけ土に植えていきます。
苔は土の上に乗せるだけでは定着できないので、少し埋め込む感じで植えるのがコツです。
苔の間に土を入れて、すき間を埋めたら、たっぷりと水を与えます。
移植法は、まき苔法とは違って、すでに生長した苔を植えるので、水やり程度の世話で済むのが利点です。
貼り苔法は、移植法と同じやり方をする方法ですが、苔をマットのように広げた状態で植えつけるのが特徴です。
移植法に比べると、短い時間で広い範囲に植えつけができるので、自宅の庭で苔を楽しみたい人に適しています。
苔玉を作って楽しむ方法もある
自然に生育している感じの苔も情緒がありますが、好みのミニ観葉植物を合わせてインテリアを楽しむなら苔玉がおすすめです。
苔玉とはその名の通り、苔で作った玉のことで、それを土台として観葉植物を植えられます。
用意するもの
・お好みの苔
・お好みのミニ観葉植物
・用土(ケト土、赤玉土)
・山野草の土
・テグス糸
・トレイ
まず、トレイの中でケト土と赤玉土を7:3の割合で混ぜます。
水を加えながら、耳たぶくらいの固さになるまでこねたら、好きな大きさに丸めてください。
周りに苔をつけていくので、イメージよりも一回り小さく丸めるのがポイントです。
苔玉用にブレンドされた用土を利用すると簡単に作ることができます。
次に、丸めた土の中央をへこませて、お椀型にし、山野草の土を入れます。
そこに好みのミニ観葉植物を植えましょう。
観葉植物は、植える前に軽く土を落として水に浸しておくとスムーズです。
続いて、土の周りにすき間なく苔をつけていきます。
つけにくいときは、水で湿らせながら作業してください。
付け終わったら、苔が取れないようにテグス糸をグルグルと巻きつけて結びます。
5分ほど水に浸したら、水切りして3日間ほど室内に置いて完成です。
このとき、風が直接当たらず、湿度変化の少ない場所を選んで管理するようにしましょう。
完成した苔玉は、窓辺など好きな場所に置いて、インテリアとして楽しむことができます。
表面が乾いてきたら、霧吹きで水をあげるようにしてください。
苔玉自体が乾いて軽く感じたときは、5分ほど水に浸してあげます。
苔が主役の小さな世界「苔テラリウム」
苔テラリウムとは、ガラスの容器やコップに土を敷き、そこにお好みの苔やミニ観葉植物を植えるインテリアのことで、苔玉と並んで人気があります。
用意するもの
・お好みの苔
・お好みのミニ観葉植物など
・ガラスの容器
・石と用土(ケト土、赤玉土)
・乾燥ミズゴケ
まず、ガラスの容器の底に石を敷き、土台を作ります。
石は、排水や通気などの役割も兼ねるので必ず敷くようにしましょう。
次に、乾燥ミズゴケを水でぬらし、しぼります。
それをほぐして石の上に薄く敷いてください。
深さのある容器を選んだ場合は、ピンセットなどがあると便利です。
続いて、ケト土と赤玉土を7:3で混ぜ、水を加えながら耳たぶくらいの固さになるまでこねます。
出来上がった土をガラスの容器に入れ、割りばしなどを使って平らにならしてください。
次に、苔を置いていきます。
数種類の苔を選んでデザインすることで、見栄えが美しくなるので、自由に楽しんでみてください。
このとき、ミニ観葉植物を一緒に差し込むことも可能です。
ミニ観葉植物以外にも、小さな人形や石を飾ることでオリジナルの世界観が生まれます。
インテリアとして置いている間に、乾いてきたなと感じたら、霧吹きで水を吹きかけて湿度管理をしてください。
主役にも脇役にもなる癒しの苔
かつては暗い場所でひっそりと生えているというイメージの強かった苔ですが、独特の雰囲気が魅力として注目され始めてからは、海外でも人気が出るようになりました。
特に、苔玉や苔テラリウムは、自分だけのオリジナル作品として、見せ方を工夫することができるので、今や苔は脇役から主役へと役割を変えつつあります。
ぜひ、自分なりの楽しみ方で観葉植物としての苔に親しんでみてくださいね。