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世界の樹木 〜2つの娑羅双樹編〜

沙羅の花

皆様、旧暦2月15日は涅槃会だってご存知ですか?
涅槃会(ねはんえ)とはお釈迦様が入滅された日です。
※お釈迦様の正確な命日は分かってませんが、この日に供養を行います。

というわけで本日は仏教と非常に縁深い樹木「娑羅双樹」についてご紹介しましょう。

お釈迦様と「娑羅双樹」

なぜ仏教と娑羅双樹が縁深いのかと申しますと、
お釈迦様が東西南北に二本ずつ並んだ娑羅の樹の下で涅槃に入ったという伝承があるためです。

つまりこの木の名前は本来「娑羅の樹」であり、
「娑羅”双”樹」というのはお釈迦様の伝承を飲み込んで定着した呼び名なのです。

「娑羅の樹」ってどんな樹?

ではここでいよいよ娑羅の樹をご紹介いたしましょう。

シャラノキ

シャラノキ

学名:Shorea robusta
分類:フタバガキ科 Shorea属(常緑高木)
別名:サラソウジュ、シャラソウジュ、サラノキ

お釈迦様の伝承に現れるのはこちら、フタバガキ科のシャラノキになります。
幹高は30mにも達し、春に白い花を咲かせ、ジャスミンにも似た香りを放つそうです。
インドから東南アジアにかけて広く分布している木なので、
まさしくお釈迦様のお膝元にはたくさん自生しているわけですね。
しかしこちらのシャラノキは日本には自生できません
(もちろん立川にもないです)
耐寒性の低い植物なので、日本で育てるには温室が必要なのです。
なのでどうやら新宿御苑の温室では見られるようですよ。

日本で言う「娑羅双樹」

前述の通り本物のシャラノキが植えられないため、
日本の多くの寺院では、代替として葉っぱが似てる別の木を植えていました。
それがこちら。

ナツツバキ

ナツツバキ

学名:Stewartia pseudocamellia
分類:ツバキ科 ナツツバキ属(落葉高木)
別名:シャラの木、娑羅樹

日本から朝鮮半島南部にかけて自生し、よく栽培もされる。
樹高は10m程度で、樹皮は帯紅色でツルツルしており、葉は楕円形で、長さ10cm程度。
ツバキのように肉厚の光沢のある葉ではなく、秋には落葉する。
……って全然違う木じゃないか!!
もはや親戚ですらない。
葉っぱも言うほど似ていない。
日本人ちょっと強引すぎやしないでしょうか。
そういう姿勢、嫌いじゃないですけどね。
※もちろん別名はフタバガキ科のシャラノキの代わりにされたためについたものです。

身近に置ける聖樹

先述の通り、本物のシャラノキは日本で管理するのはちょっと難しいですが、
その分日本ではナツツバキが「シャラの木」として出回っています。
インナチュラルの各店舗でも「シャラの木」の名前で盆栽コーナーで見かけることがありますね。
たとえ身代わりであっても、長い歴史の中でずっと寺院の聖樹として扱われてきたナツツバキです。
きっと今では聖樹としてのチカラを宿しているのではないでしょうか。
お店で見かけた際にはぜひお手にとってみてくださいませ。

姫シャラ盆栽

こちらは姫シャラ。シャラの木(ナツツバキ)の親戚です。

 

 

*こぼれ話*

さて、いきなり出てきた「娑羅双樹」の名前ですが、
おそらく抵抗が少なかった方・なぜか読めちゃった方も多いのではないでしょうか?
日本人なら誰でもなんとなく聞き覚えがありますよね。
それはきっと学生時代の思い出と深く関わっているからでしょう。

祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
娑羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす

はい、平家物語の冒頭一節です。
これ大半の中学生が必死に暗記させられましたよね。
平家物語は琵琶法師が語り広めたと言われていますので、
仏教色が濃く出た語り出しとなったのかもしれませんね。