こんにちは。「ナチュラル」の世界の旅人shioriです。
花には言葉があると言われています。
色んな意味を持つ花言葉の世界は、非常に奥深く世界中で愛されていますよね。
基本的には良い意味やロマンチックな意味のものが多いけれど、実はその中には怖い花言葉もあるんです。
近年は怖い絵展が予想外の大盛況となるなど「実は怖い」がブームのようですが、花言葉でもそんなものがあるってご存知でしたか?
なかなか興味深いので、あえて今回はそれらをご紹介してみたいと思います。
目次
花言葉が生まれたきっかけ
本題に入る前に、ちょっとだけ花言葉が生まれたきっかけをご案内します。
そもそも、身近にあった植物に意味を持たせるという慣習は世界中あらゆるところで行われていました。
全ての植物が意味を持っていたわけではありませんが、その人たちにとって特別な意味を持つ植物というのは古くから存在していましたからね。
花言葉の起源については、こういった各地の慣習が元になったと考えることができるでしょう。
そんな風に各地で人々が植物を特別視してきたなかで、特に率先してその文化を楽しんでいたのがフランスの貴族たちでした。
なんと19世紀初頭には、貴族サークル内で手作りの詩作ノートまで回覧されていたというのです。
ノートの内容は草花と特定の意味の組み合わせ例を示したもので、草花の性質とかけて恋の駆け引きのために参照されていたんだとか。
そういえば日本の平安貴族たちも和歌で似たようなことをしていましたね……。

こういった流行を経て誕生した最初期の花言葉辞典が、1819年頃に出版されたシャルロット・ド・ラトゥール著の“Le Langage des Fleurs”でした。
この本でまとめられている花言葉はラトゥールが独自に設定したもので、大きく分けて2つの特徴を持っていました。
・その植物の外形や香り・色・生態から植物の性質・特徴にあった言葉を割り当てたもの
・西欧の歴史の中で代々草花に見出されてきた意味を踏襲しているもの
どちらにしても植物と言葉の組み合わせには非常にこだわりがあったことが分かりますね。
これらの特徴は、後に続いた数多くの花言葉辞典が真似をするものとなったそうです。
また社会の各層に庭園文化が浸透していたヴィクトリア朝のイギリスでも、さまざまな花言葉辞典が出版されました。
特に、著名な絵本画家のケイト・グリーナウェイが著した挿絵入りの辞典はベストセラーになり、花言葉の普及に大きな影響を与えたと言われています。
ちなみにラトゥールやグリーナウェイが提示したものを参考に、今でも新しい花言葉の考案が続けられているそうですよ。
日本における花言葉は西洋と違うものなの?
さて、先程ちらっと平安貴族も似たようなことをしていたとは書きましたが、平安時代に花言葉があったわけではありません。
では日本で花言葉が登場したのはいつなのでしょう。
正解は、そう、明治時代初期です。
花言葉もまた文明開化の音の一部だったのですね。
当然、その頃に日本で普及していった花言葉は西洋から輸入されたものでした。
しかし日本で花言葉が愛されるようになるにつれて、日本独自の花言葉もたくさん提案されるようになっていきました。
そのため今日の日本で普及している花言葉たちは西洋と日本のハイブリッドとも言えるのです。
本当は怖い?花言葉たち
さて。花言葉の歴史をかるーく勉強したところで、いよいよ本題に入りましょうか。
植物たちが持つ怖い花言葉の数々をどうぞお楽しみください。
日本の伝説が由来の花言葉
オトギリソウ
薬草としても知られるオトギリソウにはこんな花言葉があります。
「怨み」
この花言葉は平安時代の伝説が由来と言われています。
平安の昔、とある鷹匠兄弟の弟が、秘伝の鷹の傷薬について原料(オトギリソウ)の秘密を他人に漏らしてしまいました。
怒った兄は無残にも弟を斬り殺してしまい、このとき飛び散った血痕が葉や花びらにある黒い斑点になったとも言われているそうです。
ちなみにオトギリソウは漢字で書くと弟切草なので、和名自体がこの伝説からつけられているようですね。
クロユリ
アイヌ民族の間にはロマンチックな伝承もあるクロユリにはこんな花言葉があります。
「呪い」
この花言葉は戦国武将・佐々成政にまつわる黒百合伝説が由来と言われています。
成政は「早百合」と言うそれは美しい側室を溺愛していました。
しかし彼女に嫉妬する他の側女たちが流した噂のせいで、彼女が家臣と密通していると信じた成政は、有無を言わさずに早百合の首をはねてしまいました。
早百合は死ぬときに「立山に黒百合の花が咲いたら、佐々家は滅亡する」と呪いの言葉を残したと伝えられています。
西洋の伝説が由来の花言葉
アザミ
見た目も刺々しいアザミにはこんな花言葉があります。
「報復」
13世紀、スコットランドの一部はノルウェーから侵攻を受けてしまっていました。
この花言葉はこの時代に起きた奇跡が由来になっていると言われています。
ある時ノルウェー軍はスコットランド軍に夜襲をしかけようと試みたのですが、足音を立てないよう裸足で移動していたノルウェー兵が、暗闇の中でアザミのトゲを踏みつけてしまいました。
その悲鳴を聞いたスコットランド軍がすばやく敵を発見できたことで、追い払えたのだそうです。
ハナズオウ
春に鮮やかな花を咲かせる低木ハナズオウにはこんな花言葉があります。
「裏切り」
ハナズオウの中でも、地中海付近原産のセイヨウハナズオウにはちょっと特別な伝説があります。
キリスト教の十二使徒の一人であるイスカリオテのユダが、イエスを裏切ったことを悔いて自らの命を絶ったのがこの木だったと言われているのです。
このことから特にキリスト教圏においてセイヨウハナズオウは「Judas tree(ユダの木)」と呼ばれています。
でもこの伝説、フランス語の通称「ユダヤの木(フランス語: arbre de Judée)」が誤って派生したものでは……?とも言われているので、本当は全然裏切りの木ではないのかもしれないですね。
ギリシア神話が由来の花言葉
アセビ
食べると馬が酔うというアセビにはこんな花言葉があります。
「犠牲」
アセビは英語でJapanese andromeda(日本のアンドロメダ)と呼ばれており、これが花言葉の由来と繋がっているようです。
アンドロメダというのはギリシア神話に登場するエチオピアの王女様です。
アンドロメダ姫の母・カシオペア王妃が「自分は女神たちよりも美しい」と豪語して神々を怒らせてしまい、エチオピアはあわや怪物に国を滅ぼされようかという事態に陥ります。
その時、国を救うために怪物の生け贄にされてしまったのがアンドロメダ姫だったのです。
アネモネ
風の花とも呼ばれる可憐なアネモネにはこんな花言葉があります。
「無実の犠牲」
こちらの花言葉も由来はギリシア神話だと言われています。
かつて美の女神アプロディテと冥府の女王ペルセポネに愛された、アドニスという美しい少年がいました。
両女神が彼を取り合った末、アドニスがアプロディテを選んでしまったことで、嫉妬に狂ったペルセポネの策略によって彼は呆気なく殺されてしまいます。
その時アドニスの流した血から咲いた花がアネモネだったということです。
キンセンカ
日の出と日の入りに忠実に咲くキンセンカにはこんな花言葉があります。
「悲嘆」
こちらも花言葉の由来はギリシア神話であると言われていますが、なんと由来と言われる物語は2つ存在します。
そのどちらも太陽に恋い焦がれて死んでしまった者が花に姿を変えたという結末なのがポイントです。
(1)太陽神ヘリオスとクリュティエの物語
太陽神ヘリオスの恋人・クリュティエは、ある時、ヘリオスが美しいペルシアの王女と恋に落ちてしまったことを知ります。
すると彼女は嫉妬のあまり、王女の密通をペルシア王に密告して、王女を処刑させてしまいました。
この件以降ヘリオスに絶縁されてしまったクリュティエは、太陽に恋い焦がれて徐々に正気を失っていき、やがて一輪の花へと姿を変えてしまったのでした。
(2)太陽神アポロンとクリムノンの物語
太陽神アポロンを熱心に崇拝する少年クリムノンは、その愛情深さゆえにアポロンからもまた愛されていました。
しかし彼らの関係に嫉妬した雲の神によって、アポロンは8日間ものあいだ雲に覆い隠されてしまいます。
そして9日目にようやくアポロンが姿を現した時、あわれクリムノンは悲しみに耐えかねて死んでしまっていたのでした。
アポロンはクリムノンの死を悼み、少年の遺体をキンセンカの花に変えて二人の愛のしるしにしたということです。
そしてどちらの物語も、最後はこう締めくくられます。
「キンセンカが太陽に向かって咲き続けるのはこのためなのです。」
どちらもキンセンカの特徴である「太陽に忠実に咲く」点から着想を得ている悲劇の伝説だというのが実に興味深いですね。
もっと奥深い!花言葉の世界
さてさて、ご紹介してきた「本当は怖い?花言葉」たちはいかがでしょうたでしょうか。
もちろん今回ご紹介した花言葉が全てではありません。
まだまだ怖〜い花言葉を持つ植物はたくさんあります😁
そもそも最初にご案内した「その植物の外形や香り・色・生態から植物の性質・特徴にあった言葉を割り当てた花言葉」のほうは全くご紹介していないですしね。
なによりも!
花言葉は明るいもの・ロマンチックなものも沢山あるんです。
一つの植物がプラスとマイナス両方の花言葉を持っていたり、色によって花言葉が変わったり、はっきり言って可能性は無限大。
だから今回ご紹介した植物たちをうっかりプレゼントされたとしても、即「ケンカを売られた!」と判断したりしないでくださいね^^;
あくまで花言葉は植物を身近に感じるための手段の一つだと筆者は思います。
良くも悪くも、言葉は人間にとって非常に大きな影響力を持つもの。
だからこそ重く受け止めすぎないで楽しんでいただきたいです。
もしもこの記事を読んで興味が湧いたなら、ぜひ色んな植物の花言葉を調べてみてください。
そこからきっと植物の新たな特徴に気づいたりもするはずです。
まずは自然を生活に取り込むきっかけの一つとして、花言葉の世界に触れてみませんか?