こんにちは。この世で最も菌類が苦手なshioriです。
前回もこの自己紹介でしたが覚えていらっしゃる方はいるでしょうか(笑)
さて、前回は「毒キノコ見分けられない問題」を取り上げ、6種類の食用と見間違いやすい毒キノコを紹介しました。
今回も引き続き危険なキノコたちをご紹介していきますね。
なお今回は猛毒ぶりが前回よりUP⬆しておりますので、心してご覧くださいませ。
目次
毒キノコ見分けられない問題のおさらい。
まずはじめに、最重要事項である「毒キノコ見分けられない問題」についておさらいしておきましょう。
秋になるとキノコ狩りに精を出す人が増えますが、
あまりにも食用っぽい見た目をした毒キノコが存在しすぎていて、
さらによく知られた食用キノコそっくりの毒キノコまでたくさんあるために、
採取した中にうっかり毒キノコが混ざっていては食中毒になってしまう。
つまり、ほとんどの人は自分が採ってきたものが毒キノコだと気づけないのです。
これがいわゆる「毒キノコ見分けられない問題」です。
さらに言うならば、現在正体が判明しているキノコ(約2500種)のうちほぼ全部(約2200種)が毒キノコであり、
まだ知られていないキノコが既知のキノコの2〜3倍はあると言われています。
最大1万種の中からランダムに採取して持ち込まれた籠いっぱいのキノコから、
たった300種しかない食用キノコを探し出すなんて、専門家であっても無理難題なのですね。
絶対食べちゃダメ!食べられそうに見える猛毒キノコたち
それではここから、前回に続いて食べちゃいけないキノコたちをご紹介します。
なおもう見るからに毒キノコ‼な見た目のキノコたちは、ここでは紹介しません。
絶対勘違いするだろう、人畜無害な見た目のキノコたちだけをご紹介します。(それでも一部です)
クサウラベニタケ(似ているキノコ:ウラベニホテイシメジなど)
臭裏紅茸 / Entoloma rhodopolium (Fr.) P. Kummer f. rhodopolium

By James Lindsey at Ecology of Commanster, CC 表示-継承 3.0, Link
夏から秋頃にかけて、広葉樹林や広葉樹と針葉樹が混ざった林の地上に発生します。
群生している場合もあります。
若いうちは白いキノコですが、老成するにつれて淡紅色になります。
報告されている事例では自己採集による食中毒の場合が多いですが、路上販売や流通販売されたキノコに混ざっていた例も存在します。
地方に伝わる別名にも「名人泣かせ」というものがある通り、それ程までに食用キノコと見分けがつかないキノコなのです。
クサウラベニタケの中毒症状
摂食後10分〜数時間ほどで、神経系および嘔吐,下痢,腹痛消化器系の食中毒を起こします。
神経系中毒の症状が現れる場合もあり、死亡例も報告されています。
※ただし毒そのものの作用ではなく、激しい下痢による脱水症状の2次的な被害であるとも考えられています。
ニガクリタケ(似ているキノコ:ナラタケなど)
苦栗茸 / Hypholoma fasciculare(Hudson:Fr.)Kummer

By by User:Pethan Octobre 2004, CC 表示-継承 3.0, Link
年間を通して針葉樹・広葉樹の木材や切り株などに発生します。
名前通り、生で食べると苦味があります。
よく間違えられる食用キノコのクリタケ(編注:最近クリタケにも有毒成分が発見されたので要注意!)には苦味がありません。
ちなみに加熱すると苦みは消えますが、毒性は消えないので食べないように。
ニガクリタケの中毒症状
食後3時間程度で、強い腹痛・激しい嘔吐・下痢・悪寒などの消化器系中毒症状が現れます。
さらに重症の場合は脱水症状・痙攣・手足の麻痺などを経て神経麻痺や肝障害などを引き起こします。
死亡例もある猛毒キノコです。

似ている食用キノコ:クリタケ By Lebrac – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link
コレラタケ(似ているキノコ:センボンイチメガサなど)
虎列剌茸 / Galerina fasciculata
※間違えられすぎて確実にコレラタケと断言できる画像がありません※

こちらは近種のヒメアジロガサ。やっぱり猛毒。姿もコレラタケ(ドクアジロガサ)に似ています。
CC 表示-継承 3.0, Link
旧名は「ドクアジロガサ(毒網代傘)」
某忍者のたまごマンガや、某きのこ栽培キットアプリでもお馴染みの毒キノコ代表格。
なのですが、あまりにも誤食による被害が多発していることから、より猛毒感を演出するために近年「コレラタケ」に改名されました。
秋の後半に、朽木や古いおがくず、身近な所ではゴミ捨て場に発生します。
見分けるのが困難なので「似た姿のものはまとめて全部採取するな」とすら言われる猛毒キノコです。
コレラタケ(ドクアジロガサ)の中毒症状
中毒症状は、まず食後10時間程度(摂食量により前後)経った後にコレラの様な激しい下痢が起こります。
これが改名後の名前の由来です。
コレラのような下痢は1日ほどで一度回復しますが、その2〜7日後に肝臓・腎臓などが著しく機能低下し、劇症肝炎や腎不全のような症状になって、最悪の場合は死に至ります。
毒性分は、加熱したところで一切消えません。

似ている食用キノコ:センボンイチメガサ
CC 表示-継承 3.0, Link
ドクササコ(似ているキノコ:カヤタケなど)
毒笹子 / Paralepistopsis acromelalga
主に秋頃、竹薮や笹薮の中の地上に発生します。
まれに広葉樹林やスギ林にも発生することがあります。
味もにおいも温和で特徴的なものはありませんが、毒キノコ界でも稀な中毒症状を起こさせる個性的な毒キノコです。
こちらも似た姿のものはまとめて全部採取しないことをオススメします。
ドクササコの中毒症状
ドクササコ中毒症状は、摂食から1〜7日程度経った後に発症します。
食中毒としては際立って発症が遅いので、毒性チェックをすり抜けやすく、発症しても原因が特定しにくいという危険性をはらんでいます。
なお食べた量が多いほど潜伏期が短く、潜伏期が短い症例ほど重くなる傾向があるそうです。
主要な症状は下記の通り。
・目の異物感や軽い吐き気
・皮膚の知覚過敏
・手足の指先や鼻端など、身体の末梢部分が赤くなって火傷したように腫れ上がり、その部分に真っ赤に焼けた鉄片を押し当てられるような激痛が生じる
・患部の水ぶくれ
・重症の場合は末梢部の壊死・脱落をきたす場合も
症状は長期間(時には1か月以上)にわたって続きます。
老人や子供の場合は死亡例も報告されています。
激痛を和らげるために長時間患部を水に浸し続けた結果、二次的に感染症を引き起こして亡くなってしまったり、
長期に渡る激痛から逃れるための自殺や、睡眠障害のせいで体力を消耗した結果の衰弱死に繋がることもあり、
非常に恐ろしい中毒症状だと言えます。
シロタマゴテングタケ(似ているキノコ:シロテングタケ)
白卵天狗茸 / Amanita verna
夏から秋にかけて広葉樹林や針葉樹林の地上に発生します。
幼菌の時点で既に1本あたりヒト一人の致死量に相当する毒を持っています。
タマゴテングタケの色違いです。
ドクツルタケとも似た姿ながら柄にささくれがないなど外見的違いはあります。
が、どれにしても死亡例のある猛毒キノコであることに変わり無いのでそこは見分けられなくて大丈夫です。
シロタマゴテングタケの中毒症状
中毒症状は2段階に分けて起こります。
まず食後24時間程度でコレラの様な激しい嘔吐・下痢・腹痛が起こり、ひとしきり悪化した後になんとか小康状態となります。
この時点では回復したかに見えますが、数日後には肝臓と腎臓等内臓の細胞が破壊されて急性肝不全を起こし高確率で死に至ります。
ドクツルタケ(似ているキノコ:シロツルタケなど)
By Jerzy Opioła – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link
初夏から秋頃にかけて、広葉樹林・針葉樹林ともに地上に発生します。
欧米でも「破壊の天使」と呼ばれるほどに有名な猛毒キノコで、日本でも猛毒キノコ御三家などに99%数えられる知名度と危険度を誇ります。
その知名度の高さゆえか、某南国少年のトモダチとしても採用されています。
別名:シロドク・テッポウタケなど。
真っ白な食用キノコは多々ありますが、ドクツルタケと見分けがつかないものが多いです。
さらに、白い毒キノコにも似た姿・似た威力の猛毒を持つ種類が多数あります。
つまり1本食べただけで死に至るリスクがあまりにも高いので、
こちらも似た姿のものはまとめて全部採取しないことをオススメします。
ドクツルタケの中毒症状
摂食後6〜24時間でコレラの様な激しい嘔吐・下痢・腹痛が発症します。
この症状は約1日で治まりますが、その約1週間後くらいには肝・腎臓機能障害の症状が現れて高確率で死に至ります。
摂食後なるべく早い段階で胃洗浄や血液透析などの適切な対応を取れていない場合、確実に死に至ります。
毒キノコの毒は生きるための工夫
お腹いっぱいキノコを食べたい!
そんな食欲溢れる人々にとって、毒キノコはとっても怖いもの。
まして食べられるキノコに似た姿をして惑わせてくるなんて迷惑極まりない!
と思われるかもしれませんが、一度人間都合のフィルターを外してみましょう。
キノコたちにとって見れば、身を守っていく、ひいては種を守っていくために身につけた工夫です。
猛毒も、微毒も、それぞれが自分の環境で存続していくために進化した結果なのです。
生物と自然の神秘を小さな体に詰め込んだキノコたちを相手にするのだからこそ、
キノコ狩りを楽しみたい場合は、欲張って採りすぎず・できれば栽培されたキノコを狩って・専門機関の判別を必ず受けるようにしましょうね!